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明日に向って寝て!

映画とか、本とか、アイドルとか、旅行とか。基本的にネタバレします。

『ふたりの死刑囚』

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監督:鎌田麗香
製作年:2015
製作国:日本

※奥西さんの年齢に間違いがあったので修正しました(1/28)

あらすじ

冤罪を訴え続ける2人の死刑囚とその家族、そして司法の「罪」を描いたドキュメンタリー。昭和36年三重県名張市で女性5人が殺害された「名張毒ぶどう酒事件」、昭和41年静岡県清水市の味噌会社で4人の焼死体が見つかった「袴田事件」。この2つの事件で容疑者として逮捕され、死刑囚となった2人の男性。半世紀に渡り無実を訴え、いまだ再審が開かれず、司法に翻弄され続けた2人の死刑囚とその家族の人生を振り返る。(映画.comより)

映画とは関係ない前置き

まだこのブログ4本目の記事なんですが、すでに文章って難しい!という壁にぶち当たってる有様。
少なくとも前の3本は自分としてはかなり読みにくかったので色々試して少しずつ文体とか整えていこうと思ってます。
記事によって文体が変わったりして違和感あると思いますが、あまり気にせず読んでもらえれば嬉しいです。
色んなブログ読んでて一番読みやすいと思ったのは"そこそこフランクなですます調"だったのでしばらくはそんな感じで書いてみるつもりです。

映画についての前置き

東海テレビが作るドキュメンタリーが面白いという話を聞きつけ、初めてみたのが前作『ヤクザと憲法』。これが噂に違わず本当に面白かった!すでにこの作品が東海テレビドキュメンタリーの劇場版第8弾であり、過去作はディスク化の予定はないということで今までの作品を見逃していたのことを本当に後悔。。。
そのときに予告編で流れたのが、本作『ふたりの死刑囚』だったので、これ以降は絶対に見逃すもんか!とポレポレ東中野にて鑑賞。

東海テレビ製作のドキュメンタリーということが鑑賞の大きな理由ではあったけど、他にも理由はあって。
単純に死刑というものに興味があったし、ここのところ死刑や重罰化について考える機会が多かった気がしてたからです。

少し前に読んだ小野不由美の『落照の獄』という短編がずっと心に残っていたこと、
森達也の本を何冊か読んで死刑について色々知って色々考えたこと、
『オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック』というドラマを観て刑罰というものについて色々考えたこと、
ここのところネットを初めとする世論として厳罰化への声が高まっているような気がしていたこと。。。。などなど。
予告編を観た瞬間にこれらのことが頭に思い浮かび、一本の線となってこの映画に結びついたような感覚を味い、観るべき映画だ、と直感しました。
映画や本に触れているとこういう風に、バラバラだった記憶や考えがピタッと結びつく瞬間というのがあって、そのまるで世界の真理に触れてしまったかのような錯覚が気持ちよくて映画や本にのめり込んでんじゃないかと思う時さえあります。

袴田事件

この映画ではタイトルの通り主に2人の死刑囚つまり、2つの事件にスポットを当てます。
両方とも最近大きな動きあり、報道もされていたので覚えてる人も多いのではないでしょうか。

1つは袴田事件
1966年、静岡県で4人の焼死体が見つかった事件で、当時30歳の袴田巌さんが逮捕された。
袴田さんは取り調べの結果、自白。この自白により起訴され、1980年には最高裁で死刑判決となる。以降48年以上収監されるが、2014年3月に再審が開始され、釈放。
この映画では釈放されてから約1年間の袴田さんの日常を追います。

死刑宣告の後、袴田さんは精神に障害を負ってしまいます。
釈放されてからもその影響は残っていて、家からは一歩も出ようとせずにひたすら部屋の中をトボトボと歩き回っては、時折Vサインのような形にした手を窓の外に向けて"宇宙と交信"をし始めます。
この映画の監督が取材をしようとしても全く取り合わず、完全に自分の殻に籠ってしまっているのその姿は本当に痛々しく、死刑を宣告された上での48年間の監禁というものがどれだけ残酷な行為なのか、まざまざと見せつけられます。
このシーンは本当にキツくて、まるで石を飲み込んだかのような息苦しさを感じて、本気でゲンナリしました。

しかし、袴田さんのお姉さんや周囲の人との交流を得て少しずつですが、回復をしていきます。
このお姉さんに関しても本当に感心してしまって。
袴田さんが逮捕されてからもずっと無実を信じていて、死刑判決の後も支援者の人たちと再審請求のための署名集めをしたり、弟が釈放された後に家賃収入で生活できるようにとビルを9千万円かけてビルを新築したりするんですね。
袴田さん本人やお姉さんがどれだけ苦しくて大変だったのか、俺の想像力なんかじゃ到底足りないくらいの苦痛だってことだけは痛切に伝わってきて、本当にキツかったです。

釈放から約1年後、釈放直後は完全に拒絶していた監督を将棋に誘う袴田さんの姿が撮影されていて、安心すると同時に不思議と泣きそうになってしまいました。

しかしながら、状況はあまり良いとは言えません。
現段階ではあくまで再審開始が決定されただけで、袴田さんは釈放されたものの無罪になったわけではなく、死刑囚のままです。
未だに年金も支払われていなければ、選挙権もないままなのです。
再審の開始が取り消されればまたすぐにでも収監されてしまいます。

名張毒ぶどう酒事件

もう1つの事件が1961年に起きた名張毒ぶどう酒事件です。
ぶどう酒を飲んだ5人が死亡した事件で、当時35歳の奥西勝さんが逮捕され、自白。死刑を宣告されます。
奥西さんは自白は強要されたものとして無罪を主張しますが、聞き入れらません。
一族の墓は掘り起こされて共同墓地から離されてしまい、母親も村を追われて借家暮らしになってしまいます。
この時のお母さんの映像が残っており、かなりのご高齢と見受けられるお母さんの悲しそうな目がひどく印象的でした。
お母さんは亡くなってしまい、生まれ育った村ではなく、隣町の霊園に埋葬されます。

妹さんと弁護団は無罪を信じて何度も再審請求をしますが、ことごとく棄却されてしまいます。
年月は経ち、奥西さん自身もご高齢となり衰弱。
2015年10月、とうとう手錠をかけられたまま医療刑務所で息を引き取ります。
35歳から89歳までの54年を刑務所で過ごしたことになります。

このあまりに無慈悲な結末に言葉もありませんでした。
54年間。同じような表現の繰り返しになってしまいますが、その苦しさや口惜しさは想像することすらできませんでした。

アンフェアな司法

映画内ではこれらの事件の問題点を証拠開示にあるとしています。
検察側はすべての証拠を見ることができる上に裁判に提出される証拠を選ぶことができ、さらに裁判に提出されない証拠は弁護側に見せる義務すらありません。
つまり、容疑者が犯人であるらしいという証拠だけを提示して、容疑者が犯人ではないという証拠は隠すことができてしまいます。
実際、この2つの事件では証拠が隠されていました。
それだけではなく、検察によって証拠が捏造された疑いすら指摘されます。

なぜ、こんなことが起きるのか。
死刑宣告が本人やその家族にどれだけ重大な被害をもたらすのかなんて、火を見るよりも明らかです。
すべての証拠を提示して、十分検討の上に判決をすべきだって事なんて子供だってわかるでしょうに。
きっと、それこそ子供みたいな理由なんだと思います。
警察や検察という組織は間違いを認めるというのが物凄く不得意な組織です。
その子供みたいな意地や面子やプライドのために人ひとりの人生がここまで徹底的に破壊されていいものなのか。

日本に住んでいる以上誰も無関係ではありません。
最近、何か事件が起きると全く関係ないような人が声高に厳罰を求める様子をよく見かけるような気がします。
本当にそれでいいのか。万が一その容疑が間違えだとしたら。
観ているのが本当に辛い映画ですが、観る価値はあると思います。
この映画もディスク化の予定はなさそうなので、上映しているうちに是非。

参考リンク

丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫) | 小野 不由美, 山田 章博 | 本 | Amazon.co.jp

Amazon.co.jp: 「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい 電子書籍: 森 達也: 本

Amazon.co.jp: オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 塀の中の彼女たち シーズン 1 (字幕版): generic

とうとう強行された「袴田事件」のDNA検証実験 - 小石勝郎