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明日に向って寝て!

映画とか、本とか、アイドルとか、旅行とか。基本的にネタバレします。

『ファーゴ』(ドラマ版)

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製作総指揮:ノア・ホーリージョエル・コーエンイーサン・コーエン 他
監督: アダム・バーンスタイン 他
製作年:2014(シーズン1)
製作国:アメリカ

あらすじ(第1話)

ミネソタ州ベミジー。保険会社に勤めるレスターは、ある日、高校時代のいじめっ子サムに遭遇。なりゆきで怪我をしたレスターは病院の待合室で見知らぬ男ローンに話しかけられ、代わりにサムを殺してやろうか?と持ちかけられる。一方、雪の中で事故車の現場検証をしていたベミジー警察の副署長モリーは、下着姿で死んでいる男を発見。さらにその翌日、ストリップ・バーでサムが殺されているのが見つかる。(Amazonビデオより)

映画版ファーゴ

本作はすでにシーズン3の製作が決定しているドラマシリーズなんですが、同名の映画がベースになっています。
映画版の『ファーゴ』は1996年にコーエン兄弟が撮った映画で、アカデミー賞の主演女優賞と脚本賞も取っているので知ってる人も多いと思います。

映画版『ファーゴ』は、自動車販売員の男がチンピラに自分の妻を誘拐させ義父から身代金を騙し取ろうとするが、そのチンピラが目撃者をサクサク殺すもんだからどんどん事態が大きくなって。。。というお話。
牧歌的な雪国の田舎町ファーゴで繰り広げらる凄惨な事件をコミカルに描いた傑作です。

この映画は冒頭で「これは事実である」というテロップが流れることで有名です。
こんな事件が本当にあったのかと当時の観客は驚いたそうなのですが、これは実は大嘘。映画は全部フィクションです。
この魂はドラマ版にも引き継がれていて、各話の頭で映画版とほぼ同じ内容のテロップが流れます。

(ちなみにこの映画にまつわる都市伝説がアメリカにあって、この映画を実話だと信じた日本人女性が劇中で雪に埋められた大金を探しにアメリカまで来て凍死したというもの。実際は自殺だったみたいですが、街の人と「ここってファーゴって映画の舞台なんですよね」的な会話をしていたから勘違いされてしまったらしいです。この都市伝説もまた映画化されてます)

ドラマ版は映画版を作ったコーエン兄弟が製作しています。いわば続編。
舞台は映画版の事件から20年後の同じ街、ファーゴ。映画版で起きた事件を覚えている登場人物も出てきますし、映画版のあるアイテムがとても重要な役割を果たします。
人物配置や設定もかなり似てるし、同じようなシーンや台詞もたくさん出てきます。
観てなくても楽しめますが、できれば映画版を先に観てるとより楽しめるでしょう。

キャスト

ドラマ版の主人公レスターを演じるのはマーティン・フリーマン
いつも奇人変人に振り回され、大変な事態に巻き込まれていく気が小さい男を演じてるイメージ。
その小柄な体躯と大げさな仕草がコミカルで、凄惨な物語の中におかしみを感じられるのはマーティンの功績が大きいと思います。

今回マーティンを振り回すことになるのは白い魔法使いでもヤク中の名探偵でもなく、冷徹な殺し屋ローン・マルヴォ。
演じるのはアンジェリーナ・ジョリーの元夫ことビリー・ボブ・ソーントン
一見人当たりの良さそうな顔をしておきながら、目の奥に冷たい狂気を孕んいる、超怖い名演技をみせてくれます。


他にもキース・キャラダインアダム・ゴールドバーグ、オリバー・プラットといった有名俳優が多数出演しています。
トム・ハンクスの息子コリン・ハンクスも出てて、親父さんよりかはスタイリッシュだけどもやっぱり朴訥な感じで、田舎町がよく似合ってました。

田舎町と凄惨な事件

あなたは「この辺じゃ見ない顔だな」ってセリフにリアリティを感じるでしょうか。少なくとも東京に住んでたらこんなセリフはなかなか言えないでしょう。
このセリフはかなり色々なことを示唆しています。そこが小さな町であること、住人同士がほぼ全員顔見知りであること、それゆえの温かい交流があり、裏腹に閉塞感もあること、などなど。
そしてこのドラマではこのセリフが登場します。

登場人物たちはちょっと妙な発音の英語を話します。これはどうやら田舎訛りらしいです。
雪国で、田舎町で、みんな訛ってて。。。日本で言えば東北や北海道の田舎のあたりのイメージでしょうか。
牧歌的ではあるけれども雪景色も相まって閉塞感も否めない、そんなのどかな町で凄惨な事件が起こっていくのがこのドラマ。
事態がどんどんとエスカレートしていく様子からは目を話すことができなくなり、一気見必至です。

主人公レスターが変容していく様もまた見所です。
映画版では主人公自身がそもそもの発端であり積極的に事態に関わっていくのに対し、ドラマ版では自分の意思とは関係なく事態に巻き込まれてしまいます。
さすがは稀代の巻き込まれ俳優、マーティン・フリーマン。困った顔がよく似合います。
この巻き込まれ方がとにかく怖い!
病院でたまたま知り合った人に「知り合いに嫌な奴がいてさ」って愚痴を言ったら、数日後にそいつが勝手にその知り合いを殺してきてくれちゃうんですから!!
こんな恐怖、他にあります!?
そしてレスター自身もまた罪を犯してしまい、どんどんと深入りしていきます。
マーティン・フリーマンの過去作を思い出すと、彼は嫌々ながら事態に巻き込まれていくことで最終的には成長し、何を成し遂げるというパターンが多いのですが、このドラマでは違いました。
気の小さな男が、事態に巻き込まれていくうちにどんどんと狡猾で残忍になっていくんです!
後半で彼が行うある行為はあまりに卑劣で残酷で、観ながら「まじかー。。。。」以外の感想が出てこなかったです。

他のキャラクターもとても魅力的です。
殺し屋マルヴォはもちろん、マルヴォを追う2人組の男ナンバーズとレンチ、事件を捜査する警察の面々、マルヴォに殺される男とその遺族、巨大スーパーの社長とその息子などなど、とにかく個性的で魅力に溢れたキャラクターが次々と登場します。
画面で起こっていることはとんでもなく残虐で凄惨なのに、いつでもどこか可笑しくて笑ってしまうのはこれらの登場人物たちの個性によるものでしょう。
このブラックユーモアの感覚もまた映画から引き継がれたものと言えます。

この物語内での唯一の良心、モリーとガスもまた魅力的な登場人物。
彼らが迎える結末は、世の中捨てたもんじゃないな、って思わせてくれるような心地の良いものでした。
コーエン兄弟がいつも物語に込める良心や正義といった"善きもの"の体現者たる彼らこそがこのお話の肝なのかもしれません。

長くなってしまったので最後に。
音楽の使い方がこれまたセンス良くてかっこ良くてもう最高でした!
エンディングの曲が違う回などもあり、その歌詞の内容が物語のテーマを表していたりもするので、是非とも最後のスタッフロールを含めての鑑賞がオススメです。

1シーズン10話と短めで、かつシーズンごとにきちんと物語が完結するので鑑賞しやすいのも高ポイント!
是非とも休日に一気見してみるのはいかがでしょうか!

参考リンク

映画版のBD。傑作。

尊敬する映画評論家 町山さんによる解説

ファーゴを信じて凍死した日本人女性、という都市伝説をベースにした映画