明日に向って寝て!

映画とか、本とか、アイドルとか、旅行とか。基本的にネタバレします。

『マスター・オブ・ゼロ』 - 大人になれないアイツらの、大人になれない俺らのための物語

f:id:j04401:20160210142036j:plain
原題:Master of None
製作:アジズ・アンサリ、アラン・ヤン
監督:エリック・ウェアハイム、アジズ・アンサリ 他
製作年:2015(シーズン1)
製作国:アメリカ

あらすじ

初めての大仕事、真剣な男女交際、地下鉄での痴漢撃退。
デートも、仕事も、美味しいタコスを見つけるのも、人生は難しい選択ばかり…。次々と降りかかる大人の責任に斡旋苦闘する、大人になりきれないニューヨーカー、デフの愉快な日常(Netflixより)

スローテンポのオトナなコメディ

以前紹介した『アンブレイカブル・キミー・シュミット』はハイテンションハイスピードのシットコムでしたが、本作『マスター・オブ・ゼロ』はスローテンポなコメディ。
爆笑の連続!というよりかはクスリと笑わせながらも1話観終わるごとにちょっと切なかったり、ちょっと感動してたりする、ゆったりとしたオトナなコメディでした。

主演のアジズ・アンサリは日本ではそれほど知名度はないもののアメリカでは大人気のコメディアン。
映画にもちょくちょく出てます。日本でも有名なのは『ピザボーイ 史上最凶のご注文』とかでしょうか。
本作では製作、脚本、主演と何役もこなし、とても個人的な作品を作り上げました。

デフ=アジズ=私たち

主人公デフはアラサーのインド系アメリカ人2世。
故郷を捨てて知らない土地で苦労して成功した親世代とは違い、生まれた時からアメリカにいて、不自由なく育ちます。
そこそこの収入はあって、一人で暮らしていくには困っていません。
疑問があったらすぐググって、レストランはレビューサイトで決めて、SNSのマナーに怒ったりします。「俺に返信する暇はないけど、インスタにくだらない動画アップする余裕はあるのかよ!?」
周りの友達はどんどん結婚して子供産んで子育てしてて、なんだかちょっと焦るけど、まだ独り身の自由を謳歌したいし、時間もお金も自分だけのために使いたい。

演じるアジズ自身もインド系アメリカ人2世のアラサー独身なので、デフは完全にアジズの投影です。
境遇なんかは完全に一致させています。両親の職業でさえ同じです。

ただ、これ、独身アラサーだとまるで自分のことのようじゃないでしょうか。
私にとってもインド系アメリカ人だってこと以外はほぼ全て当ては余ります。
映画が好きで、ボンクラ仲間と集まっては映画のセリフの解釈についてくだらない討論をするデフの姿は「お前は俺かよ!」ってなくらいに自分自身と重なって見えました。

大人になりきれないオトナ

デフは何も成し遂げていない自分に対して焦りはあって、若い頃に比べて選択肢が少なくなってきていることも自覚しています。
ただ、それなりに安定しててそこそこ楽しい現状から抜け出す勇気もありません。
それに何より、何かを決断したりしてその決断が自分を本当に幸せにしてくれるのか確信が持てません。
結婚式で無邪気に誓いの言葉を述べる友達を見てデフは思ってしまいます。
「相手が運命の人だなんて何で確信できる!?たまたま結婚適齢期に付き合った相手で妥協しただけだろ?」

友達の子供を預かっても、子育ての喜びはイマイチ理解できません。
子供が作ってくれたグチャグチャのサンドイッチよりもお店で買ったやつの方を選んでしまうデフは大人になりきれないオトナです。

デフの感じてる人生への焦りや不安、現状へのなんとなくの満足は現代を生きる独身アラサーにとってはとてもリアルで共感できます。御多分に洩れず私の心にもグッサグサと刺さりました。
しかし、そうやってアラサーあるあるをコミカルに描きながらもデフがちょっとずつ成長していく様子も描いていきます。

大人への階段

デフの両親は、デフと同じくらいの歳の時により良い生活を求めてインドからアメリカへ移住します。
その時の苦労話を始めて知ったデフはそのハングリーさに驚くと同時に、何も成し遂げていない自分に気づきます。
アメリカで生まれて不自由なく育ったデフには親のような強い目的意識もハングリー精神も持ち合わせてないのです。

そんな風に各話ごとに毎回デフがちょっとした何かに気付いて、ちょっとずつ成長していく様子がそれとなく描かれているのが面白い!

大好きなのが、恋人のおばあちゃんと老人ホームを抜け出す話。
レストランでおばあちゃんがデフに語る、"昔やった悪いこと"が示唆に富んでてグっとくるんです!
そうやって周りの人たちに影響されながら、デフはいつまでも子供でいる自分を自覚していきます。
最終的に大人になることを決意したデフは行動を起こすのですが、そう一筋縄でいかないところがこのドラマの面白いところ。
最終話を観終わった時には「俺も明日から頑張るぞ!」とすごく明るい気持ちになれました。

大人になれない現代のアラサーをリアルに描いた、クスリと笑えて感動もできて、最後にはとても明るい気持ちになれる傑作ドラマでした!

関連過去記事

『アンブレイカブル・キミー・シュミット』 - だけどキミーはくじけない!泣くのは嫌だ!笑っちゃおう! - 明日に向って寝て!
同じくNetflixのオリジナルドラマ。Netflixオリジナルにハズレなし。

参考リンク

Amazon.co.jp | ピザボーイ 史上最凶のご注文 [DVD] DVD・ブルーレイ 
アジズ出演のコメディ映画。

アジズ・アンサリ: 人生は生埋め地獄をオンラインで観る | Netflix (ネットフリックス)
アジズ・アンサリのスタンダップ・コメディ・ショーの動画。アラサーあるあるやマイノリティあるあるネタが冴え渡ってます。