明日に向って寝て!

映画とか、本とか、アイドルとか、旅行とか。基本的にネタバレします。

『不屈の男 アンブロークン』 - これが反日映画!?不屈の男が憎しみの果て出した答え。

f:id:j04401:20160217170537j:plain
原題:Unbroken
監督:アンジェリーナ・ジョリー
製作年:2014
製作国:アメリカ

あらすじ

アンジェリーナ・ジョリーの監督第2作。ローラ・ヒレンブランド著のノンフィクションを原作に、1936年のベルリンオリンピックに出場した陸上選手で、第2次世界大戦中に日本軍の捕虜になった米軍パイロット、ルイス・ザンペリーニの体験を描いた。「ユナイテッド ミュンヘンの悲劇」「300 スリーハンドレッド 帝国の進撃」に出演したイギリス出身の新進俳優ジャック・オコンネルがザンペリーニ役で主演し、ギャレット・ヘドランドジェイ・コートニー、ドーナル・グリーソンらが共演。日本人ギタリストのMIYAVIが、ザンペリーニを追いこむ日本人将校の渡辺睦裕役で出演している。脚本にジョエル&イーサン・コーエン兄弟、リチャード・ラグラベネーズ、ウィリアム・ニコルソン、撮影にロジャー・ディーキンス、音楽にアレクサンドル・デプラほか、豪華スタッフも結集した。(映画.comより)

前置き

日本で起きたこの映画に関したちょっとした騒ぎについては、本当に心底馬鹿らしくって触れるのも嫌なんですが、その騒ぎの結果として東宝が配給から降りて最終的に超小規模公開となったのは本当に腹立たしいのでちょっとだけ書きます。

詳しい話はこことかこことかこことかを読んでもらえらばいいんですけど。
要はこの映画の撮影中に保守系メディアによって「アンジーが反日映画を撮ってる!」と報道されてしまってネットで炎上。公開中止を呼び掛ける運動にまで発展してしまい、配給予定だった東宝が公開を見送り。色々あって、結局はビダーズ・エンドという配給会社によって単館上映された、というお話。

いや、本当にこれについて感想言うのも馬鹿らしいんだけども、端的に言うならば、

  1. 観てから批判すべきだし、
  2. 自分たちの負の歴史については受け止めるべきだし、
  3. 歴史にはいろんな方向からの見方があるってことを理解すべきだし、
  4. 例えどんなに間違ってたとしてもいかなる表現も規制されるべきではない

って思いました。
こんなこといちいち考えるのも書くのも阿呆らしいんですが、こういう現状を改善していくには批判された側や擁護する側が懇切丁寧に論理立てて反論してかなくちゃいけないんですよね。。。。
批判する側は馬鹿の一つ覚えみたいに騒ぎ立ててるだけなのに。本当に不公平。
かくいう私もこういったことに関わりたくない一心で懇切丁寧な説明も論理立てた説得からも逃げてはいるんですが。。。

ちょっと思ったのは、「じゃあ、いつだって映画の悪役を担ってくれてるドイツやロシア(ソ連)ではこういう騒ぎって日常茶飯事なのかな?」ってこと。
かるーく調べてみたら文句言ってる人はちらほらいたけど、公開中止の運動にまで発展してるような例は見当たらないような・・・・いや、ありました。
『The interview』って映画が自国を侮辱してるって言って無理やり公開中止させようとした、北朝鮮って国が。

日本って国は軍事独裁国家と同じレベルでいいんですかね。

キャストとスタッフ

主人公ルイスを演じるのはジャック・オコンネル。過去の出演作、何本か観たことあるはずなんですが、ちゃんと認識したのは本作からでした。

ルイスを虐待する日本人士官、渡辺伍長役にミュージシャンのMIYAVI。こちらの方も知らなかったのですが、紅白なんかでも演奏してる一流ミュージシャン。
狂気を宿した目で渡辺伍長を憎々しく熱演してました。

監督はみんな大好きジョリ姉ことアンジェリーナ・ジョリー
私たちの世代からすると元祖姉御!って印象です。
えらの張った輪郭、鋭い眼光、分厚い唇のとにかく圧が強い顔。いつも戦う孤高の女性ばかり演じている・・・それしか演じられないというべきか、彼女が演じると全てそうなってしまうと言うべきなのか・・・
個人的にはいつでも強い!って時よりも『マレフィセント』の時みたいに強さの中に弱さを見せる演技とか、『チェンジリング』の時みたいに弱さの中に強さを見出してく演技してる時がすげー最高です。

ジョリ姉はきっと情が有り余ってる人で、それが国連大使だったり、養子もらいまくったりしてるのに表れてるような気がします。
そんなジョリ姉は本作で、撮影監督にロジャー・ディーキンス、脚本にコーエン兄弟というとにかく一流のスタッフを集めて、自分の情を映画という形に昇華させてました。

オリンピック選手の地獄巡り

本作は大きく分けで2部で構成されています。

主人公ルイスはベルリンオリンピックに出場した陸上選手で、4年後の東京オリンピックを夢見ていたんですが、第2次世界大戦が開戦してしまいます。
東京オリンピックは中止になり、ルイスも兵士として戦闘機に乗り込みます。
あるミッション中、戦闘機が故障して海に不時着してしまい、ルイスは漂流を始めます。
この漂流が2部のうちの前半部分です。

生の鳥を食べようとして嘔吐したり、飛んできた飛行機に助けてもらおうと思ったら機関銃で狙撃されたり、銃弾の雨から逃げるために海に飛び込んだらサメがいたりと過酷なサイバルの末、仲間も餓死してしまいます。
ガリガリにやせ細ったルイスは47日の漂流の末、敵である日本兵に救助され、捕虜となります。
(最近、鯨油取りに行って漂流して痩せこけたり火星に取り残されて痩せこけたり、そんな話ばっか観てるな、俺。。。。)

漂流という過酷な地獄を乗り切ったルイスだったのですが、そのあとも地獄は捕虜生活へと形を変えて続いていきます。

ここまでの前半部分、サメと戦ったりして映像的には面白いんですが、映画としては不要だったのかなー、なんて思いました。
できれば2部のうちの後半部分とさらにそのあとの話が観てみたいと思いました。
(詳しくは後述します)

鬱屈の渡邊伍長

ルイスが収監された大森収容所の上官である渡邊伍長は反抗的なルイスを徹底的に虐待します。
精神的にも肉体的にも追い詰められていくルイスを見てるのはかなりキツかったです。

しばらくすると渡邊伍長は昇格したと言い、収容所から去ります。
安堵するルイスもまた別の収容所に移ることになるのですが・・・移転先の収容所を仕切っていたのが、昇進した渡邊だったのです。

この渡邊伍長という人物は1998年にCBSのインタビューを受けていて、そこで軍の命令としてではなく、自分の気持ちからルイスを虐待したと証言しています。
(証言映像はYoutubeで見ることができます)

www.youtube.com

名家生まれのエリートながら捕虜収容所の上官止まりである現状に対する鬱憤を捕虜で晴らしていた、とも思えますが、このインタビューなんかを見ると相当鬱屈したものを抱えてたようです。

ルイスの答え

映画は終戦を迎えルイスが帰国したところで終わります。
エンドロールのナレーションでルイスはPTSDに悩まされながらも渡邊を赦す選択をしたことが示され、長野オリンピックで聖火ランナーとして走るルイス本人の映像を見せてくれます。
"日本で走る"という夢を58年ごしに叶えたルイスと、それを拍手で讃える日本人という映像には強い感動を覚えました。

テロによって憎しみがばらまかれ、復讐心やナショナリズムという形で火種を燻らせている世界に対して、赦すことで憎しみから解放されるんだというジョリ姉のメッセージを感じました。


・・・ただ、それなら、帰国後に渡邊に対する憎しみの坩堝に囚われたルイスがどうやって赦しの道を選んだのか、っていうそっちの方が観たかったなー・・・なんて思いました。
いや、だって、ナレーションでさらっと省略されちゃってたけど、そっちの方がある意味過酷な地獄だし、映画としても面白そうだし、個人的にも興味あるかなー・・・なんて。
前半の漂流シーンを省略して、そっち撮ってくれた方が・・・なんて。

いや、でも漂流シーンもよかったですし、すごく誠実で真面目で、素晴らしいメッセージを持った映画だと思いました。
反日だなんて一切感じなかったですし、戦闘機乗りのルイスが破壊された日本の街や日本人の死体を見て自分のやってたことを自覚するというシーンもあったので、ものすごくフェアな描き方をしてると思いました。

こういう誠実な映画が配給会社の自粛のせいで単館上映っていう現状は本当に許せないので、ぜひ観に行ってもらいたいです。
観客動員数をがっつり増やして、日本人は馬鹿ばっかじゃないって示たらいいですよね。

参考リンク

文春、産経の「反日」攻撃でアンジーの映画が公開見送りに! ネトウヨが作る検閲社会|LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見
公開中止騒動についてまとめられた記事

町山智浩 アンジェリーナ・ジョリー『不屈の男 アンブロークン』を語る
前述の記事内でも触れられている、町山智浩さんの映画紹介

「不屈の男 アンブロークン」は本当に反日映画なのか考えてみた。 (Unbroken) - きままに生きる 〜映画と旅行と、時々イヤホン〜
こうやって真面目に分析して自分の考えを文章にできるって本当にすごいと思います。こういう人が世の中を良くしてくんだと。