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明日に向って寝て!

映画とか、本とか、アイドルとか、旅行とか。基本的にネタバレします。

『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』 - 一見さんお断りのファンムービー。テレビドラマの特別編なら、そう宣伝しないと・・・

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原題:Sherlock: The Abominable Bride
監督:ダグラス・マッキノン
製作年:2015年
製作国:イギリス

あらすじ

ベネディクト・カンバーバッチ主演で世界的人気を誇る英BBCドラマ「SHERLOCK シャーロック」の特別編。舞台を現代から1895年ビクトリア朝のロンドンに移し描かれるスペシャルエピソードで、本国イギリスとアメリカでは2016年元日に放送される作品を、日本で劇場公開。映画館では「忌まわしき花嫁」本編(90分)に加え、特典映像として「脚本家スティーブン・モファットと巡るベーカー街221Bの旅」(5分)、「シャーロック製作の裏側 主要キャスト・スタッフとともに」(15分)が上映される。(映画.comより)

ドラマ『SHERLOCK/シャーロック』

この映画はそもそも、2010年にイギリスBBCで放送されて世界的なヒットとなった『SHERLOCK/シャーロック』というドラマ。
マーク・ゲディスとスティーブン・モフェットという2人のシャーロキアンシャーロック・ホームズおたく)によって製作された傑作で、現在シーズン3まで放送済みです。
ドラマでありながら1話90分で、1シーズン3話構成と、長々続く海外ドラマが苦手だという人にもシリーズ物の映画感覚で楽しめる作品です。

そもそも『シャーロック・ホームズ』とはコナン・ドイルというイギリスの小説家が1890年代に発表したシリーズで、名探偵シャーロック・ホームズとその相棒で元軍医のジョン・ワトソンがその推理力や知識、時には腕力も使いながら事件を解決していく推理小説です。って、説明不要ですよね。
今なお根強い人気を誇るシリーズで、ホームズもワトソンもそれぞれ"名探偵"と"探偵の相棒"の代名詞になっていると言っても過言ではないでしょう。
ご多分に漏れず私も中二病真っ盛りの10代の頃に熱中し、踊る人形の暗号を暗記したりしました。

ホームズは名探偵ではあるんですが、人格にかなり問題があることは読んでいればすぐわかります。また、意外と武闘派で、劇中にもアクションシーンがけっこう登場します。(ホームズがたしなむのは日本式格闘技バリツ!)
そんなホームズに振り回されながらも共同生活を続け、その活躍を綴るワトソンという構図にはそこはかとないBL臭も漂います。
その辺の要素にがっつりフォーカスしたガイ・リッチー版の映画『シャーロック・ホームズ』『シャーロック・ホームズ/シャドウ・ゲーム』も記憶に新しいです。

さて、BBC版ドラマSHERLOCK/シャーロック』は設定を現代に移し、探偵コンサルタント業のホームズとイラク戦争帰りの軍医ワトソンが事件を解決していく物語です。
単純に舞台を現代に移しただけではなく原作の様々なキャラクターを現代風にアレンジ
さらにはストーリー自体も原作を元に現代版にアップデートされています。
例えば第一話の『ピンク色の研究』の元は原作の『緋色の研究』という話です。
その他にも細部に至るまで原作の要素が散りばめられていて、製作のマーク・ゲディスとスティーブン・モフェットの異常なまでのシャーロック愛を感じずにはいられません。

それでいて現代版にアップデートされたストーリーそのものも素晴らしくて、当時の世界情勢やイギリスの状況を背景にした問題提起をしながらもエンターテイメント性を全く損なっていない脚本は見事としか言いようがない出来栄え。
さらには前述したアクション性、ホームズの人格破綻描写、BL臭という要素まで詰め込まれているんだからまさに傑作といえるドラマシリーズでした。

さらにいうならベネディクト・カンバーバッチが世界的スターにのし上がるきっかけになったのもこのドラマ。
このドラマを観たスピルバーグが『戦火の馬』にカンバーバッチを出演させたというエピソードもあるくらいです。

『SHERLOCK/シャーロック』映画版!?

で、今回の『忌まわしき花嫁』なんですが、映画じゃないんですよ。
本当はイギリスやアメリカで2016年の元旦に放送されたテレビドラマ特別編
それを日本では映画版として映画館で上映してるんです。
当然、内容もドラマ版を観ていることが大前提。
ドラマシリーズを未見だと、理解するのはかなり難しいです。
というか、後半はかなり複雑なことになっていくのでシリーズ観ていたとしてもちょっとわかりにくかったです。
私もシーズン3だけでも直前に観直しておくべきだったと後悔しました。

これは本当に大問題です。
なにが大問題って、日本での宣伝の仕方ですよ!
ポスターからもチラシからも予告編からも「これはテレビシリーズの特別編で、シリーズ観てることが前提になってますよー」ってことが一切読み取れないんですよね。
(予告編の台詞にちょっと妙なところがあるけど、そんなの本編観てないとほぼ読み解けない)
ポスターなんかから読み取れるのは「シャーロック・ホームズの映画なんだな」ってことくらいで、ドラマシリーズを観てた人なら「今度は当時のロンドンに舞台に戻すの!?」と驚けるくらい。

で、蓋を開けてみれば完全にドラマファン向けの作品で、なにも知らずに観た人は完全に置いてけぼり。
なんなら怒った人もいるんじゃないでしょうか。。

なんとなく、事情はわかるんです。
今まではシーズンごとにシリーズで出してたのに今回は特別編一編だけってのはどうやって配信しようか悩んだはずだし、後半のある仕掛けのおかげでこの作品を一番楽しめるのは"特別編だって知らずにみたドラマファン"なので、その人たちを驚かせてやろうと思ったのかもしれません。(事実、私は椅子から飛び上がりそうになるくらい驚きました)
その一方で、何も知らない人たちを劇場に入れて金を取ってやろうという魂胆も見え隠れするわけで。。。

多分、なにも知らずにこの特別編だけを観た人は『SHERLOCK/シャーロック』シリーズはつまらないって思っちゃうんじゃないでしょうか。
(なかにはドラマ版も観なきゃ!って気持ちになる奇特な人もいるかもしれないけど)
それは一人のシリーズファンとしては寂しい限りです。

あと、本編の前にスティーブン・モファットがホームズの自宅の美術にいかにこだわったのか嬉々として語る映像が流れるんですが、あれも大失策かと。
ああいうのは本編観たあとにメイキングとして見るから面白いのであって、本編観る前に見せられても雑音にしかなりませんでした。
スティーブンが紹介してた小物ばっかり気になっちゃって全然集中できなかったですよ・・・

とまぁ、本編についてはほぼ触れずに宣伝方法への愚痴となってしまいました。
興味がある方は是非テレビシリーズからご覧になることをお勧めします!
すごく面白いですから!

蛇足ですが。
この『忌まわしき花嫁』ですが、テレビシリーズ観てることは大前提としても、原作の知識もかなり必要とされたような気がしてます。
少なくともホームズとモリアーティ教授の対決の行方が原作ではどうなったのかを知らないとこのシーンの意味はわからないんじゃという箇所がちらほら。
アメリカやイギリスでも混乱したって観想が多いみたいですね。

参考リンク

Amazon.co.jp|『SHERLOCK/シャーロック』 DVD プチ・ボックス シーズン1
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