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明日に向って寝て!

映画とか、本とか、アイドルとか、旅行とか。基本的にネタバレします。

『劇場版501』 - 破綻と混沌の先にAV監督がたどり着いた優しさ

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監督:ビーバップみのる
製作年:2015年
製作国:日本

映画の性質上、今日の記事には多分に下ネタを含みます。

あらすじ

このドキュメント501は劇場版テレクラキャノンボールのヒットに気を良くしたAV監督カンパニー松尾が2014年3月、渋谷の居酒屋で、功労者ビーバップみのるに何気なく言った一言、「みのるちゃん、ご褒美に好きなの撮っていいよ」から始まった。
“つまらないAVは見たくない”をキャッチコピーに掲げるハマジムにふさわしい面白いAVを目指したビーバップみのるは、その直前に面接した“なんとなく有名になりたい”AV女優霜月るなを本当に有名にするべく人類最強の顔射の女王を目指すプロジェクト501を発動させる。
501とはAV界における最多顔射回数を意味する数字であり、さらに最後の1発を人間の100倍精子を発射す豚にお願いするという、達成すれば文字通り人類最強となる壮絶かつ夢のある企画だった。
早速501はスタートするが、その構想は撮影開始早々もろくも崩れてしまう。
その意外な展開に耐えきれなかったみのるは彼女の元を去り、ひとりになる。
ひとりになったみのるはどうするのか?
ナンパ、テレクラ、vineTwitterYoutube…狂人化したみのるはメディアを駆使し “情に訴える映像”を公開する。
その“くやし涙”に同調したこれまた色々抱える男や女や物資までもがインターネットを経由して続々と集結する…すべてはビーバップみのるが掲げた501”のために。その混迷の結末はいかに…(HMJM公式サイトより)

テレクラキャノンボールとビーバップみのる

まず前身となった作品『劇場版テレクラキャノンボール2013』について説明が必要でしょう。
お笑い芸人がファンを公表したり、テレビのバラエティ番組がパロディ企画をしたりとかなり話題になったので知ってる人も多いかもしれません。

もともとは1997年から始まったアダルトビデオの企画で、2013年に行われたのが第5回目。これが全編10時間にも及ぶ大作なんですが、それを約2時間に編集して劇場公開されたのが『劇場版テレクラキャノンボール2013』です。
これがまぁ本当にすごい作品で、観てる側の倫理観とか常識とかを根底から揺るがしにかかってくるとんでもない傑作にして怪作なんです。

簡単に説明すると、6人のAV監督が東京から札幌までの道のりをRUNステージとSEXステージという2つのステージで競い合うというレース。
RUNステージはキャノンボールの名前そのままで、チェックポイントにたどり着くまでの速さを競うステージです。それぞれ車やバイクでゴール地点を目指します。
SEXステージは東京から札幌までの各チェックポイントで実施されるステージで、ナンパやテレクラを用いて素人女性との性行為を撮影し、その内容をポイント制で競うステージです。
とまぁ、ここまで書いて本当に倫理的にどうかしてるなってのはよくわかるんですが、本当に面白いので、AVとか抵抗ない人には超絶オススメです。
色んな意味でグロくて、色んな意味で吐きそうになるのでそれ相応の覚悟は必要ですが・・・

で、この『テレクラキャノンボール』に若手枠として出場してるのが本作の監督ビーバップみのる。
彼には大きく2つの特徴があります。
まず、1つが無免許であるということ。"キャノンボール"なのに無免許。RUNステージあるのに無免許!
彼は運転できないので、RUNステージではくじ引きで負けた人の車に同乗します。
いつでも行き先は人任せだったビーバップみのるが、本作では自分の足で行く方向を決めていくというのが1つのコンセプトにあります。

もう1つの特徴がそのナンパテクニック。
とにかく口がうまくて、言葉数がめちゃくちゃ多いんです。
膨大な豆知識を交えた話術で巧みに素人女性をナンパしていきます。
その話術にかかると最初は出演する気が全く無かった女の子もいつの間にかハメ撮りされちゃってるから、観てるこっちとしては開いた口が塞がらない・・・
実際、札幌でのSEXステージでは顔出しNG、手コキですらNG、話聞くだけと言ってた20歳の女の子が最終的には顔出しで本番までしちゃってるんだから本当に驚くしかないというか。
言ってることは概念的だったり理屈がおかしかったりすんだけど、畳み掛けられるうちになんかよくわからないけど納得しちゃってる感じというか。
最初は教団のカルトの教祖的だと思ったんだけど、それよりかは催眠商法の手口を見てるみたいだなんて思いました。

その様子がものすごく面白いんだけども同時にモヤモヤポイントでありイライラポイントでもあるというか。
口八丁でAV出演させちゃうって、フィクションに登場したらはっきりと悪役だし。
こういうやつがいるから女性の不幸な事故が減らないんだよ!って怒ってみたり。
ナンパなんて絶対できない俺を尻目にこういう奴らが無垢な女性たちを日々騙してるんだ!!って怒ってみたり。
でもやっぱり、同時にすごく面白がってる自分に気づいちゃったり。。。

ちなみにBiSというアイドルグループの解散ライブのドキュメンタリーをテレクラキャノンボール2013の6人の監督が撮っていて、そこでのビーバップみのるの行動にも私は一BiSファンとして激怒したみたり。(最終的な行為じゃなくて、そこに至る過程が酷すぎる)
でも、やっぱり一番面白いのがビーバップみのるのパートでもありものすごくアンビバレントな気分になったのをよく覚えています。

初っ端からの挫折

そんなビーバップみのるが「好きなものを撮っていい」と言われて撮ったのが本作。
「とにかく有名になりたい」というAV女優霜月るなを得意の口八丁で丸め込み、人類最強の顔射の女王を目指すプロジェクト501を発動する。
501とは目指す顔射の回数。今までのAV界の最大顔射数が500なので、その500を達成し、最後の1回は人間の100倍の量の精子を出すという豚にかけてもらおうというプロジェクトなのである!

(いや、自分でもこんな文章を打ち込んでるなんて本当にどうかしてると思うけど、でもそういう映画なんだから仕方ないじゃないですかー!)

が、しかし、このプロジェクトはいきなり頓挫します
顔射してくれる500人を霜月るな本人に街中でナンパして集めさせようとするのですが、霜月るなは自分は人見知りだなんだと言い訳をして結局1人にも声をかけることができません。
舞台を東京から霜月るなの地元大阪に移した後、ビーバップみのるが代案を提案するもそれもクリアできず、翌日にはこの企画から降りるという旨のメールがビーバップみのるに届きます。

このパートは本当にイライラして。
自分には信念があるだとか目標のためならそれ(顔射)くらい簡単と言いながら努力しようとすらしない霜月るなにはフラストレーションが溜まるばかりです。
ただ、それも推し量るべきというか。最初の面接の時点で有名になるという目標に全くビジョンがないのは言葉の端々から伝わってきてました。
今まで本を最後まで読み終えたことがないと豪語するし、twitterのフォロワー数で人に優劣をつけようとするし、メールで仕事降りるし、ギャル文字だし(画面にメールが表示されるんだけども読めなかった)・・・
一人もナンパすること、というか声をかけることすらできずに車に戻る際に開き直ったように「ちゃんちゃん」なんて言う姿はまるで子供でした。

そんな子供みたいな女優に振り回され、撮影存続の危機に陥ったビーバップみのるはなんとか映像素材を集めようと迷走していきます。
ここからの破綻っぷりはとんでもなくて、なんとなく霜月るなに似てる人(服装が似てるとか)を集めて撮影してみたり、彼女に泣きついたり、顔射のイベント開いてみたりととにかくめちゃくちゃな行動に出ます。
破綻は行動だけではなく映画自体にも現れ、映像がどんどんとめちゃくちゃになっていきます
時系列が入り乱れた断片的な映像が展開していくドラッキーな映像がスクリーンには映し出され、観客は唖然とする他ありませんでした。

一応、この展開は前半に登場するビーバップみのるのセリフが伏線になっているようでした。
ビーバップみのるがナンパのきっかけとして、クロノスとカイロスという時間の概念の話を持ち出します。
クロノスとは客観的な時間感覚で、万人に共通しているものです。「お湯を入れて3分」の3分は誰が計っても等しく3分。これがクロノス。均等かつ順序正しく過ぎていく時間です。
カイロスは主観的な時間感覚て、人や状況によって変わっていきます。仕事終業までの10分とゲームやってる10分の感覚はまるで違いますよね。これがカイロス。不均等で時系列がバラバラの時間です。

で、後半の破綻した映像はまさにビーバップみのるその人のカイロス時間の表現になってるんじゃないかと思いました。
ぼんやりと昔を思い出す時って、時系列がバラバラだったり、微妙な関連から全然違う思い出を断片的に思い出したりするじゃないですか。
それが映像として表現されてるんじゃないかと思いました。

感心しつつも、破綻が生じた支離滅裂な映像は見ていてちょっと苦痛ではありました。
その苦痛もまたビーバップみのる自身の苦悩の追体験ではあったのだと思いますが。。。

ビーバップみのるの優しさ

ビーバップみのるは優しい人です。
何一つ頑張ることができない、口だけの女優に対して根気強く説得を試み、代案を提示し、なんとか撮影を続けようとするような人です。
そのビーバップみのるが破綻の末にある結論に辿り着きます。

それは還暦越えのAV女優ナツコさんに霜月るなの企画を引き継がせることでした。
ギャルメイクをさせられたナツコさんの要望は、その・・・はっきり言って妖怪の域
短いセリフも覚えられず、数分歩くと膝が痛んで大往生するギャルメイクのおばあちゃんAV女優。痛々しくて直視できませんでした。

そんなナツコさんですが、街行く人に果敢に声をかけていきます。
ギャルメイクのおばあちゃんにいきなり「あたしと遊んで行かない?」と声をかけられた人は皆逃げていきます。
それでもめげずに声をかけ続けるナツコさんの姿に感動してしまい、不覚にも涙腺が緩みかけたその時、なんと1人の男性が足を止めます。
話を聞きつつも「でも、コンビニ行かなきゃ」と渋る男性に「コンビニは24時間空いてる!私と遊んでからでもいいじゃない」と切り返すナツコさんになんだか号泣。

なんか、明日から俺もなんか頑張ってみようかな。って気持ちにさせられました。

好調だった若い頃から老人AV女優にまで身を堕としたナツコさんを未来のるなちゃんと呼び、撮影を続行したビーバップみのる。
最後にナツコさんに言ってもらうセリフには彼の優しさが滲み出ていながらも、まるで自分に言い聞かせるようでなんだか感動的でした。

頑張らなくてもいいけど、頑張れよ


割と褒めた感じにはなりましたが、やっぱりモヤモヤが多量に胸に溜まる作品であることは間違いありません。
後半の破綻した映像群は結構苦痛だし、性産業に対する根本的な疑問もやっぱり残ります。
そもそも3日間で500人ナンパして顔射って企画自体が破綻してね?という疑問もあり。。。
ただ、こういう答えがない疑問にモヤモヤするのがまた人生ですし、「ミルかミナイかの人生なら、俺はミル人生を選ぶ」精神で、興味ある人は是非、『劇場版テレクラキャノンボール2013』と合わせての鑑賞がオススメです。

参考リンク

やさしいスポンジ(レゲエマスターver) by GALAXIE DEAD | Free Listening on SoundCloud
エンディングテーマ。混沌とした映画のラストに爽やかな救いの手を差し伸べるようでした。

ドキュメントAV「501」制作途中報告動画その① 主演女優さんの募集締め切りは5月15日am12:00です。 - YouTube
本作の制作報告動画。破綻の始まりが見て取れます。